振袖の行く先 名古屋

一度着た振袖の行き先はどこへ。

振袖は特別な宝物

着物はほとんど着ませんが、振袖なら一点持っています。もう随分以前のことですが、成人式を控えた私に両親が仕立ててくれたものです。
レンタルで済ませるものだと思っていた私は、わざわざ買わなくていいのにと口では遠慮していましたが、内心とても嬉しかったのを憶えています。
デパートのテナントに入っている呉服店へ母と二人で向かいました。店員さんが持ってきてくださる振袖を数点試着してみましたが、なかなかピンときませんでした。
着物を着る習慣が無い自分には選ぶセンスが無いのだろうと、どれか無難なものを選ぼうとしていた時、その振袖が現れたのです。
絞りが入った古典柄で、流行のものではありませんでした。予算から出てしまうのですが、と申し訳なさそうにおっしゃった店員さんが持ってきてくださったのです。
ひんやりとした正絹の手触りが心地よい、美しい振袖でした。この着物がいいと強く感じました。
しかし、なにぶん高価で強請ることができずにいた私へ、表情を読んだのか、これにしようと母が笑ってくれたのです。
帰宅してから話してみると、大事に着るんだぞと言って父も微笑んでくれました。私にとって自分の振袖は、家族の思い出も含めて、大切な宝物です。