振袖の行く先 名古屋

一度着た振袖の行き先はどこへ。

赤い振袖 ~私と姉と母の思い出~

振袖と聞いて一番最初に思い浮かべた事はやっぱり成人式の振袖です。私には1つ年上の姉がいて、女2人姉妹のため両親は迷わず振袖を購入してくれました。
来年はあなたも着るんだから一緒に来なさい。そう母に言われて「姉の」振袖を買いに出掛けた事を今でも覚えています。
「やっぱり赤かな?」姉と母と店員さんの会話で色は決まり、私は蚊帳の外のようでブラブラと広い店内を散歩していました。
本当は紫色がいいのにな…そんな事は言えませんでした。「柄は2人で選びなさい」そう言われて赤い振袖が並ぶ1角に呼ばれその中から好きな柄を1つずつ言い合いました。
決して安くはない買い物の為私と姉は気を使い安いなりにも可愛い桜の花が描かれた柄を選びました。
「試着しますか?」店員さんの一言で姉は振袖を試着し帯を決め私達2人の振袖が決まりました。
それから1年後私は(あの赤い振袖を着るのか…)と本当は着たかった紫色の振袖を着た雑誌のモデルさんをパラパラと眺めてしました。
そこに母が姉に聞こえないように小さな声で私にこう言いました。「去年はお姉ちゃんの好きな色にしてしまったからあなたの好きな紫色の髪飾り買ってきたの」
私はその可愛いらしい赤と紫色とピンクで作られた髪飾りを手に取りとても嬉しく泣きそうになったのを今でも覚えています。
それから数年後、その赤い振袖はもう一度出番が来ることになりました。
姉の結婚式です。本当は可愛いくて動きやすいキラキラしたドレスを着たいそんな年頃でしたが私は迷わず姉と私が腕を通したあの赤い振袖を着ることを選びました。
そこでももちろん、母が選んでくれた私の髪飾りを付けて。
次はあと20年後隣で眠る私の娘に母がしてくれた様に一生に1度の思い出に残る振袖を選んであげたいと思っています。